合唱音源デジタル化プロジェクト 山古堂

早稲田大学グリークラブOBメンバーズ<特別編集> 真性合唱ストーカーによる合唱音源デジタル化プロジェクト。


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第17回 2つの忘れ得ぬ演奏会、そして20回代の東西四連(第28回)

2004年10月。山古堂主人は、有り難くも2つの演奏会の招待状を頂いたのでのほほんと出掛けて行き、その2つ共に忘れ得ぬ感動と「男声合唱真性ストーカーをやってて良かった」、との思いを新たにした。以下、書きたいことをテンコ盛りにしたので、いつにも増して雑然とした文章になってしまいました。

まずは、言わずと知れた同志社グリークラブ創立100周年記念式典(2004/10/10 同志社寒梅館・ハーディーホール)。
その前日、台風の関東直撃をモノともせず現役女子高生と本番してとっても楽しい思いをした山古堂主人(母校である埼玉県立大宮高等学校音楽部の第40回記念定期演奏会に賛助出演して、「新しい歌(信長貴富)」を一緒に歌ったのよ)、やむなく当日に新幹線を飛ばして京都入りしたので、午前中の式典には間に合わなかったが、午後からの「レインボー・コネクション・フェスティバル」と銘打った演奏会と、夕刻からのウェスティン都ホテルでのレセプションに伺わせて頂きました。

久々に降り立った京都・今出川。空気が何とも懐かしいと言うかほっとすると言うか。で、地下鉄から地上に上がって歩いていくと、同志社グリーの練習場所でもあったあの学生会館はもはや無く、寒梅館というレンガ張りを模したコンテンポラリー・クラシックな大きくて立派な建物があって、まずこれに度肝を抜かれ、その寒梅館前にたむろする老若男男・同グリネクタイを締めた数百の同志社グリーOBにも度肝を抜かれ、招待受付に行ったら赤い紐のカードホルダーに名前を丁寧に印刷されたのをチケット代わりに首にかけてくれて無邪気に喜び、知り合いはいないかとうろついていたら同期の安池倫成君/1989卒が怪訝そうにこちらを見ている。・・・後で聞いたら紐の色にヒエラルキーが顕れていて、赤い紐はとっても偉い人とかとっても上のOBの色だそうで、そんな偉い知り合いは俺にはいないぞ、と思ったそうな。16年ぶりの再会だったが、安池君・瀬戸君・三浦君、みんな変わってないね(笑)。

「レインボー・コネクション・フェスティバル」は、文字通りのオールド・ボーイズから現役までを9世代に輪切りにして、それぞれが20分弱のステージを持って好きな歌を歌う、というもの。各ステージの冒頭には、舞台背面のスクリーンに各時代の同志社グリーの歴史的な写真や当時の世相がビデオ映写され、これもまた大変に効果的。勿論1985年の阪神優勝シーンもあって、これには会場の4%くらいの方から万雷の拍手(爆)

下記、コネクション区分及び演目(敬称略、原則として作詩・作曲・編曲者略)

ゴールド・コネクション/1962以前卒

1.みゆるしあらずば
2.希望の島
3.浮世の旅路
4.心の緒琴に
5~7.「月光とピエロ」より 秋のピエロ/ピエロ/月光とピエロとピエレットの唐草模様
8.最上川舟歌
指揮:森本潔/1961卒(1~4)、日下部吉彦/1952卒(5~8)

レッド・コネクション/1963~1968卒

1.A.Duhaupas「Messe Solennelle」より KYRIE
2.「月光とピエロ」より ピエロの嘆き
3.Georgia On My Mind(井坂紘/1964卒編曲、坂下義紀/1964卒独唱)
指揮:澁谷和彦/1967卒、廣野寛/1968卒
オレンジ・コネクション/1969~1974卒

1.「Ten Glees」より Turn, Amarillis, To Thy Swain
2.男声合唱組曲「北陸にて」より ふるさとにて
3.黒人霊歌 All my trials(福永陽一郎編曲)
4.Musical「New Moon」より Wanting You(福永陽一郎編曲)
5.さらば青春(福永陽一郎編曲)
指揮:桑山博/1969卒
イエロー・コネクション/1975~1980卒

1.Yellow Age's Tada-Take Medley(稲熊裕之編曲)(山古堂注:いわゆるタダタケパッチワーク系)
2.A.Duhaupas「Messe Solennelle」より CREDO
指揮:山下裕司/1977卒
グリーン・コネクション/1981~1986卒
1.男声合唱組曲「わがふるき日のうた」より 鐘鳴りぬ
2.ミュージカル「Man of la Mancha」より The Impossible Dream(福永陽一郎編曲)
指揮:芦田直幸/1982卒
Pf:長田育忠
ブルー・コネクション/1987~1992卒
黒人霊歌集より
1.Ev'ry Time I Feel The Spirit
2.Ride the Chariot
3.My Lord, What a Mornin'
4.Didn't My Lord Deliver Daniel
指揮:中村洋/1987卒  
インディゴ・コネクション/1993~1998卒

ミュージカル「Man of la Mancha」(福永陽一郎編曲)より
1.Man of la Mancha
2.The Impossible Dream
指揮:福田研二/1994卒
Pf:長田育忠
パープル・コネクション/1999~2004卒

男声合唱組曲「柳河風俗詩」全曲
指揮:白石法之/2001卒
同志社グリークラブ現役
アメリカ演奏旅行報告
1.斎太郎節
2.赤とんぼ
3.Ave Verum Corpus
指揮:岩田有正

とにかく日本の男声合唱のサウンドやスタイルの50年にも及ぶ変遷が、同志社グリー歴々の肉声によって眼前に繰り広げられていくという、この贅沢極まりない時空に居合わせる幸せ! この時の山古堂主人たるや、男声合唱を聴きながら目はランラン顔はニタニタ、時には身を乗り出したりうめいたり、何かが憑依したような熱狂的拍手を送ったりで、周囲の人は間違いなく「何? まるでストーカーぢゃない?」と思ったことでしょう。ええ、本望でございます。
特に最年長、1962年卒以前で構成されるゴールド・コネクションの演奏にはシビレましたね。声が直接飛んでこないでホール全体を包むように鳴ってくる。そのゴールド・コネクション・チーム中の最若手として、テナー最後列に立っていたのが浅井敬壹氏/1962卒だったり。後刻、旧知である木谷誠さん/1982卒と話したら「いやぁゴールドは素晴らしかった、これからは古いOBをもっと大切にしよう」(笑) (木谷誠さん:東芝EMIの現代合唱シリーズ「海に寄せる歌」で「すでに鴎は」のソロをされた方で、この演奏会でもグリーン・コネクションでラ・マンチャのソロをされていました。)
また涙を呑んで前略中略しますが、最若手OBである1999~2004年卒・パープル・コネクションの「柳河風俗詩」も筆運び軽やかでにじみのない、颯爽とした演奏。これ、市販クオリティかと思いますよ。

レインボー・コネクション、企画・構成ともまさに抜群でした。「働かされ世代」であるグリーン/ブルーあたりの世代が、やや人数も少なく練習も不足していたという話も後刻耳にしましたし、実際にそういう問題への危惧からレインボー・コネクションという企画そのものを危ぶむ声も少なくなかった、とも聞きましたが、実行委員の方々の御苦労も終演時の満場の拍手と共に昇華し、報われたことと拝察致します。

また、総勢600名の出席と思われるレセプションでは、北海道から駆けつけた92歳でしたか?のOBの方が「同志社グリークラブホール建設を実現させよう!」と意気軒昂、レセプションの最後には、会うたびにいつも山古堂主人を優しく丁寧に叱咤鞭撻、もとい激励指導してくれる東京クローバークラブ指揮者・小林香太君/1998卒の指揮による詩篇98を推定500名で大合唱しちゃったりと、まさに同グリづくしの夕べ。

レセプション後は深夜2時まで、伝説の方々からたくさんのお話をお伺いしたり、「あの1969年の第18回四連、四つの仕事歌のソリストは素晴らしいですね」と言ったら、そのご本人がすぐ近くに座っておられたり! この日は頬が緩みっぱなしでした。お世話になった皆様、ありがとうございました。同志社グリーの暖かい懐に抱かれた、今年屈指の幸福な一日でした。特に音源デジタル化担当の藤田和久様/1969卒、山古堂主人のことをいつも気に掛けて下さいます木谷さん、そして深夜遅くまでtake careしてくれた安池君、心より感謝申し上げます。

・・・ここで更に私的でセンチメンタルな述懐をお許し頂きたい。
1990年2月10日、福永陽一郎先生が逝去された。陽ちゃん先生の訃報は、翌11日に同期の津久井竜一君/1989卒からの電話で知ったのだが、当時山古堂主人は岡山県倉敷市で勤務していたために何らの動きもとれず、その後企画された東京での追悼演奏会にも、練習の最低参加回数の制限だったか?で出演が叶わなかった。だが、まさに神の引き合わせ、当時倉敷男声合唱団で一緒に歌わせて頂いていたメンバーに木谷誠さん/同グリ1982卒がおられ(彼とは重度高齢障害者ホームや、ハンセン病療養施設である長島愛生園へ慰問演奏に行っていたボランティア・カルテット「倉敷うたえもん」の仲間でもあった)、木谷さんの絶大なるお力添えと、同志社グリークラブOB団体であるクローバークラブの温かい御配慮によって、京都シルクホールで開かれた関西地区での追悼演奏会にて、クローバークラブの一員として「月光とピエロ」を歌わせて頂いたのである。以来、同志社グリークラブへの感謝の念を忘れたことは無い。この素晴らしき同志社グリークラブとクローバークラブの、次なる100年へ向けた益々の御発展を祈念致します。

もう一つの招待状は、「オール関西学院グリークラブ」と銘打った演奏会(2004/10/31 東京第一生命ホール、東京新月会主催/関西学院グリークラブ現役による共演。演奏会プログラムによると関東以外からの賛助出演OBも12名おられるとのこと)。
この演奏会もまた、山古堂主人にとって決して忘れ得ぬ演奏会となった。少し詳細に記します。

1ステは東京新月会単独で「月下の一群 第1集」を山田真也さん/1983卒が指揮、ピアノ前田勝則さん。縦横がきちんと揃えられ、爽やかな秋空の如く一点の曇りも迷いも無い演奏は、これまた前日ちょっと胃にもたれる出来事があった山古堂主人には、文字通り一服の清涼剤であった。
(山田真也さん:伝説の第31回東西四連「ギルガメシュ叙事詩/前篇」の年のベースパートリーダーであらせられた、ブレザーの良く似合うダンディで美声のお方。山古堂主人がメンネルコール広友会に1年だけ在席しチャイコフスキー歌曲集のソロを歌い逃げ(爆)した1996年に、広友会のベースパートリーダーをしておられたので、何だか山田さんには頭が上がりません。)
演奏は、縦横の揃いはもちろん、各パートの独立性と均衡が絶妙で、この組曲に多用される4パートの掛け合いなどもとても安定しているし、4曲目セカンドパートソロ「おまえの波はやすみなく/その影を崩している」なんて、橋本尚樹さん/1984卒とかが最前列にいてズルい(笑)。上手過ぎです。
(橋本尚樹さん:東芝EMIの現代合唱シリーズ「尾崎喜八の詩から」で「春愁」のソロをされた方。山古堂が浪人時代、受験本番直前の寒い深夜にこの「尾崎喜八の詩から」や「在りし日の歌」のレコードを聴いては「絶対に関西学院に合格して関学グリーで歌うぞ」と奮起して勉強したという、まさに受験アイドル? 橋本さんのご尊顔を拝するといつも、あの浪人時代の最後の追い込みを思い出して、つい遠い目になってしまう山古堂主人でした。大変お世話になりました。)

2ステは関西学院グリークラブ現役による松下耕編曲の日本民謡3曲。八木節は完成度が高くて、関学クオリティがしっかり保持されているのが嬉しい。が(笑)、刈干切歌ではトップが内部分裂を起こして来てパート内の音質・音程が揃わない。これはかなり痛かった。分かりやすく言えば、リズムセクションは完璧でリードヴォーカルが割れるという傾向。だから、朗々としたリードヴォーカルではない3曲目の津軽じょんがら節では再び持ち直して、ステージの後味は悪くない。低声系が関学トーンを堅持し、かつリズムセクションとして有効に機能していたし、しかも全体で40名いたから、音楽の骨格はブレておらず、関西学院グリークラブのDNAをしっかり聴かせて頂きました。・・・トップ、もう少し耳使って揃えましょうね。

3ステ、再び東京新月会単独ステージ、東京新月会指揮者の中西洋さん/1958卒の指揮による「心への、歌」。中西さんの選曲による珠玉の合唱作品集で、ロシア正教歌や黒人霊歌を含むキリスト教系合唱曲によって構成されており、曲間にシンプルかつスマートなMCをはさみながらステージが進められた。(Pf:前田勝則)
1.HOSPODI POMILOI(S.V.Luvovskii作曲/Paul John Weaver編曲)
2.BE THOU NOT STILL OH LORD(Hydon Morgan作曲)
3.RIDE THE CHARIOT(W.Henrry Smith編曲)
4.HOLY,HOLY,HOLY(Reginard Heber作詩/John.B.Dykes作曲/Chas Grayson編曲)
5.AGNUS DEI(Theodor Koerner作曲)
6.THE LORD'S PRAYER(Albert H.Malotte作曲/Carl Deis編曲)
陳腐な言い方だが、この奇跡的な第3ステージを表現する言葉を私は持たない。客席で涙する人が少なからずいて、当方もその一人でありました。中西さんの指揮をされる背中、そして演奏、曲。全てが印象的でした。特に終曲「The Lord's Prayer」は作品そのものが素晴らしい上に、演奏があまりに感動的で、立ち上がって拍手しようとしたら周囲にそういう人が一人もいなくて、気の小さい山古堂主人はスタンディング・オベイションをし損ねてしまった。こういう肌が粟立つ感覚は久しぶりでした。終演後のレセプションで中西さんに御挨拶にお伺いしたら、2年前にお会いした事を覚えていて下さって、それだけでまた涙したりして。
・・・中西さんと初めてお会いしたのは2年前、2002年10月5日のことで、早稲グリOBメンバーズの演奏会宣伝のために、山古堂の全社員が総出で東京新月会を訪れた時でした。練習後も居酒屋で中西さんと御一緒させて頂きましたが、大変に音楽そして合唱に真摯な方という印象が強く残りました。今回の演奏会で初めて中西さんの音楽に触れた訳ですが、もっと前から触れていたかった、と切に思いました。

4ステ、新月会及び関学グリー現役による合同演奏で、校歌&応援歌集。
関西学院の校歌・応援歌・学生歌から6曲を選び、ほんの一言の解説と歌詩の一節の朗読を交えながら演奏するという企画。関東ではあまり馴染みのない関西学院を東京でも知って頂きたい、ということでしたが、そもそも校歌以外の学校歌を演奏会できちんと歌う機会は、どの合唱団においてもあまりないので、こういうまとまった形で聴けたのは大変喜ばしい。

1.OLD KWANSEI(H.P.Peck作詩/K.A.Langlots作曲/岡島政尾改編/林雄一郎編曲 原曲:Princeton Univ. "Old Nassau")
2.関西学院逍遥歌(竹友藻風作詩/林雄一郎作曲 1936年作)
3.空の翼(北原白秋作詩/山田耕筰作曲 1933年作)
4.緑濃き甲山(由木康作詩/山田耕筰作曲/林雄一郎編曲 1939年作)
5.A SONG FOR KWANSEI(E.Blunden作詩/山田耕筰作曲/林雄一郎編曲 1949年作)
6.新月旗の下に(武石幸雄作詩/石田清和喜作曲/北村協一編曲 1954年作)
 (・・・と、演奏会プログラムよりも詳しく掲載してみたりw)

山古堂主人、実は関西学院の校歌・応援歌集のレコードもCD化してありますが、生で聞くとやはり全然違いますな。
ということで、北村協一先生/1954卒の指揮の下、関学グリーメンの身体に染み込んだ歌、そして演奏スタイルというものを、まざまざと見せつけられた。その中でも、「校歌の中でも最も荘重で、最も美しい」と尾崎和義さん/1968卒が解説され、米国仕込みの流暢な発音で一節を朗読された「A Song for Kwansei」は、まさに解説の通りに演奏され、ひときわ素晴らしい印象を残した。
(尾崎和義さん:何と山古堂主人宅から徒歩7分のところに居を構えておられた! 是非とも新しい書斎に伺わせて頂きます。)
演奏会オープニングで現役が振った「空の翼」も悪くなかったが、やはり最終ステージで総勢80名かつ北村先生の指揮ともなると、それはもうあの1980年代を髣髴とさせるKGトーンが鳴り響き、山古堂主人なんぞはもう腰を浮かせて「これだよ、これ!!」と、何かが憑依したような熱狂的拍手を送っていたから、周囲の人は間違いなく「何? まるで狐憑きぢゃない?」と思ったことでしょう。ええ、まさに山古堂稲荷(?)

この演奏会でたっぷり関学トーンを吸収した山古堂主人、幸せ一杯でレセプション会場に向かったのでした。レセプションはレセプションで、これまた様々な出会いがあり、この日の輝きが更に一段と増したことも特筆でございます。
招待状を御手配下さいました谷川様/1979卒、ありがとうございました。ほとんど日帰りと言う関学グリー現役の皆様も、お疲れ様でした。ステージマナーやMC運びについても全く違和感を感じさせない試合巧者、さすがはオール関西学院グリークラブ。しっかりと心に残る演奏会でした。

<訃報>
関西学院グリークラブOB・東京新月会指揮者の中西洋さんが、12月10日に逝去されました。あの第3ステージから40日、指揮台に立つ中西さんの後姿や、終演後の少しお疲れの中にも満足された御様子が、今も鮮やかに蘇ってきます。いつの日か、あのような演奏が出来るように頑張っていきます。ありがとうございました。

さて、涙を拭いつつ、まるで付け足しのように(笑)

<第28回東西四大学合唱演奏会>

1979/06/25 新宿文化センター大ホール

RECORDING PROJECT LTD. MML-1114~16

このレコードも幸いにして数枚を発掘出来たが、レコードの材質が余り良くなくて、どれもノイズを落とし切れなかった。その中でも相対的に盤質の良かった仲村弘之先輩/1980卒のレコードをCD化した。
録音のマイクポジションやミキシングはかなりこなれていて、ホール感を再生してくれる。残響はやや薄いが、これは新宿文化センターでの収録なので、そんなものでしょう。

1.エール交換(関学・慶應・同志社・早稲田)

冒頭に記した「オール関西学院グリークラブ」の最終ステージでは美しく珠玉の演奏がなされた「A Song for Kwansei」。さて、このエール交換での「A Song for Kwansei」はと言うと、「体育会系威圧式」。高声系と低声系の音色の乖離については、昨年よりは良いですが、やはり高声系の腰の細さが若干気になる。但し、これはこれで関西学院グリークラブの特色として認知してしまえば良いのです。
率直に言えば、歌詩を無視して聴くならば、押し出しの強い、しっかりして骨太な良い合唱です。で、そういう歌い方が10年ほど続いていきます。

慶應ワグネル、テナーが強靭でなかなかカッコ良いですが、バリトンが吼えますねえ、少し上ずって。実はこのバリトンの音色~~ワグネルに限らないが、掘って押し付けた声でノド自慢で、それはまだ美声が居るならば許せぬでもないが、最悪なことに合唱全体の構成を気にもしない~~が、各団の個性を失わせる重大な要因である、という話を、今年後半に知り合った複数の合唱団の古いOBの方々も指摘していました。このバリトン、1970年代初頭より30年近くの間、メジャーな男声合唱団を支配します。時代の流行ではありましたが、演目に対する向き不向きがはっきりし過ぎる声。

同志社、発声が少し古風な感じになっている。1960年代風のあまり作為的な太さを求めない声。実は良いことなのですけど、1970年代後半の風潮からすると少し違う路線かも知れない。特に高声系はそういう意味で独特であり、遠くまで飛ぶ良い声です。

早稲田、やや力任せかな? トップに強力な金管がいる。揃えや歌い回しは「都の西北」を歌う分には決して悪くないのですが、これでシューベルト演奏するんですかい? と一抹の不安。

2.関西学院グリークラブ

フランスの詩による男声合唱曲集「月下の一群」

1)小曲(詩:フィリップ・シャヴァネックス)
2)輪踊り(詩:ポール・フォール)
3)人の云ふことを信じるな(詩:フランシス・ジャム)
4)海よ(催眠歌)(アンドレ・スピール)
5)秋の歌(ポール・ヴェルレーヌ)
作曲:南 弘明
訳詩:堀口 大學
指揮:北村 協一
Pf:塚田 佳男
1978年9月14日にかの高校男声合唱界の名門・祟徳学院グリークラブが委嘱初演した作品を、大学合唱団として初めて選曲したもの。もしかして関東初演か?
関西学院グリークラブがこの曲集を演奏する際は、何故か2曲目「輪踊り」を出版譜より長2度高くする。長2度高くすることによって、バスは最低音がFからGに上がって鳴りやすくなるが、逆にトップテノールはG'を連続で出し続けることになり、コミカルな要素がやや失われてしまう。
演奏自体は、フレーズやディクションの細かいところを非常に丁寧に造り込んでいると思いきや、何でもないところで雑だったり、リズムが何となく不揃いだったり、ややいつもの関学のソリッド感が薄い。また、例えば2曲目「輪踊り」や3曲目「人の云ふことを信じるな」などではテンポも安全運転でややモチモチ、歌い方にもコミカル感が欠如していて、もうちょっと笑わしてもらいたいという残尿感(爆)。この年の4回生、学指揮が広瀬康夫氏であったからか、どちらかと言えば関学らしからぬ型破りなカラーを持った代だったそうで、北村協一氏もそのやんちゃぶりが結構お気に入りだった、と関係者から聞いたことがあるが、そう言われると何となく納得が行ったり、あるいは「もっと思いっきし行ったれや!」と思ったり。

山古堂ライブラリにある関学グリーによる同曲の演奏記録は下記の通りで、基本的には全ての演奏が第28回東西四連のスタイルを踏襲している。

第10回 関西六大学合唱演奏会(1983/11/03 大阪フェス)
指揮:小杉 穂高(学生指揮者)/Pf:近藤 裕介(学生)

55th 関西学院グリークラブリサイタル(1987/02/01 大阪フェス)
指揮:太田 務(学生指揮者)/Pf:島田 稔也

第47回東西四大学合唱演奏会(1998/06/27 大阪フェス)
指揮:北村 協一/Pf:藤田 雅

この「月下の一群」という曲は、旋律も綺麗だし譜面ヅラも難しくないしで、男声合唱団の格好のレパートリーであり、しかも指揮者なり演奏者がこねくり回すには最適なオモチャなので、整った演奏から妙ちきりんなのまで様々なスタイルの演奏を聴くことが出来る。が、キレイな演奏は多かれど、楽曲ごとに独立したカラーで切り分けた演奏は、ほぼ皆無である(実は伴奏ピアノ譜にその鍵がふんだんに隠されている、と山古堂主人は確信している)。そんな中、関西学院グリークラブの演奏は、率直に言って全曲あまり変わらないカラーで進めては行くが、四声の独立した動きを機能的に、しかも常時聴かせている点は、楽曲の構成や意図を聴衆に見せるという意味において、特筆モノである。(もちろん減点法で行けばあまり減点も無いし、倍音も綺麗ですけど。)

3.慶應義塾ワグネル・ソサィエティー男声合唱団

 「シベリウス男声合唱曲集」より
1)Sortunut aani(失われた声/カンテレタルより)
2)Terve Kuu(月よ ごきげんよう/カレワラより)
3)Venematka(舟の旅/カレワラより)
4)Tyonsa kumpasellaki(島の火/カンテレタルより)
5)Metsamiehen laulu(森の男の歌/A.Kivi)
6)Sydameni laulu(我が心の歌/A.Kivi)
作曲:J. Sibelius
指揮:木下 保

慶應ワグネルとしても東西四連としても、第22回東西四連で演奏して以来2度目のシベリウス。

現代のように海外の音源が簡単に入手出来るようになる前、すなわち1980年代中盤までは、この慶應ワグネルの演奏が模範として流通していた。他の合唱団も未だあまり取り上げなかったし、何よりこの広い音域を歌い切れる声を持つ団が少なかった。慶應ワグネルのトップは、過去にもそういうチャレンジをモノにしてきており、この演奏でも全体の完成度を上げるのに大きく貢献している。

演奏は、低声系の音質に起因する分厚い鳴り、やや当て気味に張る高音、そしてドイツ音楽風の作り。現代の耳で聴けば、批判の嵐と言うか、まさに前時代の遺物、ということになってしまうのだろうが、演奏スタイルには流行り廃りがある。かのヘルシンキ大学合唱団だってスタイルに数度の変遷があるし、スウェーデン王立合唱団だって20年程前には雑で鳴らしまくりの時代があった。
但し、この慶應ワグネルの演奏を擁護しきれない、実際上で変な部分もあって、例えば1曲目はまるまるリピートするし、他の曲でもテンポ設定があまりにシベリウスらしくない部分がいくつかあるしで、このあたりは木下保氏のセンスが時折楽曲と歩み寄らない、その典型の一つかも知れない。山古堂主人は率直に言ってこの演奏を模範とはしていなかった。・・・ちょっと厳しいですが。
また、バリトンがややデリカシーに欠けるか。特に3曲目冒頭と4曲目旋律。エール交換で記した通りで、声を発することに意義がある、みたいな感じで歌うのも、さすがにシベリウスでは我慢の限界、所詮は内声なんだからもう少し控えろよ、と小一時間問い詰めたいところ。たかがバリトンされどバリトンくらいの気持ちで歌ってよ。あ、まるで別の某団のバリトンに文句言ってるみたいですね、ははは。

4.同志社グリークラブ

 男声合唱と打楽器のための「もぐらの物語」
1)目覚めの挨拶
2)遠い星に
3)地底の傷み
4)束の間のやすらぎの中で
5)闇から闇を
作詩:小田切 清光
作曲:三木 稔
指揮:富岡 健
Perc:永井 麻利子、松永 吉明

この「もぐらの物語」は滅多に演奏されることのない曲。聴く者からすればやや難解、というのが最も適切な理由と思います。
曲の概要をお知り頂くため、演奏会プログラムに記された、作曲者の言葉を転載(原文まま)。

「もぐら」の生いたちの記(ピアノ伴奏譜版より抜すい)  三木 稔

 従来、私は音楽の本質に思想性を混入させたくない立場をとっていた。しかし、この作品を完成させるにあたって、三十数年間私に恩恵を与えて来た社会、そして同時に私に重い重い影を背負わせて来た社会を批判する、私たち世代の記録のような形で結実させたかった。また、いわば私の原点ともいうべき南洋の土民たちの素朴な呪詛の歌のように、何か動物の形を借りてそれを形象化したいとも思った。
 「もぐら」というペーソスに満ちた動物を設定したのは、いくらか詩作の経験もある妻であった。先ずコミックながら働き者のもぐらが登場(1章)し、戦前の暖かい人間性に満ちた田舎者が浮き彫りにされる。どうせもぐらだ、と拗ねてはみるが、まだ単なるセンチメンタル・サブマリンだ(2章)。そこへあの忌わしい戦争がやってきて、ねぐらを根こそぎ掘り起こす(3章)。荒れ狂った戦いの後のひととき(4章)---だが戦争に代ってやってきた建設の時代は、文明の美名の下に田園を踏みにじり、もぐらは出口を失って地下をさまよう(5章)。
 私はこの曲の中で心象描写的な旋律を書きなぞったけれども、それだけで押し進めるにはあまりに苦痛を感じ、究極の願望に通ずる幾つかの大らかな線(ふしといおうか)を追求したのも、作曲の段階で常に相反する二律が頭の中で渦巻いていたからに他ならない。
 1966年6月から11月にかけ、邦楽器群のための「古代舞曲によるパラフレーズ」と並行して作曲されたが、打楽器奏者2名の伴奏として書かれ、1967年1月14日、神田共立講堂での横浜国大グリークラブ定期演奏会において、指揮・山根一夫、打楽器・田村拓男、水野与旨久といった方々で初演された。


邦楽のにおいも少しするが、山古堂の感覚で言えば、むしろフランス人が日本の邦楽をヒントに作曲したかのような、ネオ・ジャポニズムというか、ややフランスがかった感じもしないではない。1960年代当時は既に既成概念に囚われない劇的音楽が数多く作曲され、例えば黒澤明監督の映画に使われる音楽とか、あるいは伊福部昭のゴジラシリーズとか、完全な日本風でもなく、かといってドイツ風でもないちょっとゆがんだ和声と旋律を取る音楽が一時代を築いていたように思われ、そういう観点で言えば、この「もぐらの物語」は第28回四連の時点で、感性的には既に「懐メロ」であったと思う。
上記の一文にある「心象描写的な旋律」というのは、ロマンチックで分かりやすい旋律ではない。まさにモグラの心象であり、かつそこに変に擬人化した視点も無い。要はサングラスをかけたモグラの姿では無い。無論人の姿と重ねているのだが、モグラを擬人化するのではなく、モグラの生態に人間の文明の陰影を半分ほど押し込んだ、という方が正しい(ああ回りくどい表現だこと)。

演奏は、そもそもこの楽曲が四声を揃えて鳴らすとか、朗々たる主旋律を他パートが支えるとかいう作りになっていないから、合唱としては、表現は悪いがかなり拡散して聴こえる。そういう効果も狙ってのことだとは思うが、そういう中にあって、トップ・セカンドの声が良く飛んでくるので、そういう部分では非常に楽曲が生きて分かりやすい。他方、低声系で言葉がはっきりしないところでは、どうも楽曲も分かりづらくなってしまう。音域的にもやや低めとすることで「地下」を意図させようとしたような部分があって、打楽器に負けてしまう。これ、もしかしたら実際に客席で聴いたらきちんと聴けていたかも知れないが。

指揮の富岡健氏は同志社OBで、東西四連では初の指揮となる。

5.早稲田大学グリークラブ

  「シューベルト男声合唱曲集」より
1)Die Nacht
2)An Den Fruhling
3)La Pastorella
4)Widerspruch
5)Gott Meine Zuversicht
6)Die Nachtigall
作曲:Franz Schubert
指揮:福永 陽一郎
Pf:高橋 裕子

早稲田グリーが単独ステージで福永陽一郎氏を指揮者に迎えたのは、第24回東京六大学合唱連盟定期演奏会(1975/05/03 東京文化会館大ホール)が最初であり、その後、定期演奏会や東京六連では何度も指揮をして頂いたのだが、東西四連の場では、この第28回東西四連が最初で最後である。テンポを少しゆっくり目に取っているのにフレーズが流れているのは、やはり「福永マジック」か。
早稲田グリーが東西四連でシューベルトを演目としたのは、第16回、第24回に続き3度目。第16回はともかく(爆)、第25回では驚きの好演をした早稲田グリー、今回はどうかというと、・・・うーん(笑)、でも、概ね良い演奏です。

1曲目「Die Nacht」、テナーにとって鬼門の曲。気張っちゃうんだよな。最初のoウムラウトで少し膨らますあたりでも、やはり不自然かつノド声が混ざってくる。ここで聴こえて来る金管ノド声の方のお名前は判明してます(笑)。そんな訳で、やはり1曲目は鬼門でしたが、2曲目以降は、第25回四連ほど軽くは無いにせよ、澱みなく音楽が流れています。福永先生の棒で歌うと、何となく音楽の本質に近いところまで無理なく行けてしまうことがあって、それもコバケン先生の時とは異なり、ちょっとだけキビシ目のお言葉と独特の棒さばきのおかげか、自然に行けてしまって、後で「何か凄い演奏しちゃってるな、オレ達」ということがあるのだが、まさにそんな感じか。3曲目「La Pastorella」ではとても自然な流れが心地よく、かといって4曲目「Widerspruch」ではフォルテがしっかり鳴る。なかなかの好演だと思います。それと、個人的に高橋裕子さんのピアノは好きです。

6.合同演奏

男声合唱のための組曲「蛙の歌」
1)小曲
2)亡霊
3)鰻と蛙
4)蛇祭り行進
5)秋の夜の会話
作詩:草野 心平
作曲:南 弘明
指揮:福永 陽一郎

第14回東西四連の合同演奏(指揮:木下保)以来、14年ぶりに登場した演目。が、率直に言って、可も不可も無い。単独でかなりの難曲をこなせるようになった各団が集ったのだから、もう一段上のレベルを目指せたかと。張り合いになっちゃっているあたりは、山古堂主人としても他人のことをとやかく言えないし、そ~れを思うと、恥ずかしい~(笑、by「わが歳月」より「葉月のお月」)

7.ステージストーム

1)関西学院:U Boj!
2)慶應義塾:ポーリュシカ・ポーレ
3)同志社 :Little Innocent Lamb
4)早稲田 :Die Lorelei
ステージストームは将にストームだから、論評を加えるまでも無いが、一応ひと言ずつ。
関学、やっぱりこれを歌えば横綱っす。慶應、ロシア民謡でガチンコ勝負出来る声はさすが。同志社、やっぱりスリリング(笑)。早稲田、胸の奥にしまって下さい(爆)

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